公認心理師・青少年心理アドバイザー 阿部誠一の連載コラム

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阿部誠一(Seiichi Abe)
インタビュー/公認心理士・阿部誠一の理念
子育てコラム
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「子育てって親の自分探し」

No.355 『今後の日本人に必要な能力とは-1』
こんな人間を育てたいという哲学の欠如

学力低下だから、小学校中学校の土曜日授業を復活?

学力ってそもそも何でしょう?社会に必要とされる学力や能力とは?

ちなみに、OECDの調査等では、学力よりも、先進国中ダントツ最下位の「学習に対する意欲の低さ」の方が、遥かに日本特有の問題点のはずです。「なぜ今この勉強をしなければならないのか」分からないまま、ただ勉強させられているんですよ?ちなみに読書量も最下位。

コミュニケーション能力が低いと言われるからディベートの授業を追加?大卒の離職率が4割にものぼるから、経済産業省がキャリア教育コーディネーターを育成?体罰が表面化したから部活指導ガイドライン策定?これからは罰ランも禁止でしょうか。イジメ自殺が表面化したから第三者機関設置や刑事事案化?

「●●●だから●●●を付け加える」のように、バラバラな【対策】を追加していけば、今の日本の教育による問題は根本的解決に向かうのでしょうか。貴方はそれで足りると感じますか?漠然と、そんな事じゃないと感じてはいませんか?

今の日本の教育、特に「古すぎるカリキュラム」「教師の資質と待遇」「学校教育への過度な偏りと期待」「家庭教育への無策」そして全てに流れる「自己肯定感を育てる意識の欠如」は、西洋に「追いつけ追い越せ時代仕様」の制度に、その都度出て来た問題への【対策】を加えた、既に今の時代に合わないものなのではないでしょうか。韓国や東南アジア諸国の教育改革に比べ、日本は非常に遅れているように感じます。国として足りないのは【対策】等ではなく、「こんな人間を育てたい」という【哲学】なのではないでしょうか。

例えば、英語・英会話。茨城県鹿嶋市は「世界にはばたく人づくり」を目指して、教育特区(旧英語特区)指定を受け、小学校1年生から週1で本格的な英会話カリキュラムが導入されています。ちなみに国語や算数は、週4・週5以上ですよね。英会話コミュニケーション能力は、もはや国民全員に必要な能力ではないのでしょうか。国内企業の社内公用語が英語になる可能性も、M&Aで経営トップや上司が外国人になる可能性もある。英語が通じるなら世界中の企業から選んで就職活動する事もできます。

経済力の相対的低下に伴う、アメリカ他国際機関や国際的枠組みからの扱い低下の大きな要因として、英会話力の低さとそれを放置したままの島国根性、つまり「国際感覚の欠如」があるのは間違いありません。歴史的な新興国移転による経済停滞期という原因のみならず、交渉という戦いに勝てない政治力・コミュニケーション能力の欠如こそが、日本の地位低下の原因でしょう。(そしてそれは、古い時代の教育を変えられない、官僚シンクタンク制の最大の弱点≒政治のリーダーシップの欠如≒責任を負う者がいない国家にもつながります。そう、誰も責任を負わないから、教育への【哲学】が無いのです。)

(続く)

  • 我が子が英語を話せないのは不安だ
  • 英語を話せる人の平均収入は話せない人の2倍以上だと知っている
  • 日本人全員が英語を話せなくても良いと思う
  • レスリングよりテコンドーが残るのは不思議だ
  • 今の日本に誇りを持てる
  • 日本人で良かった
  • 日本はもっと内需拡大できる
  • 我が子が年収200万円時代でも構わない
  • 我が子には日本国内で生きていって欲しい
  • 何だかんだ言っても、日本は何とかなる

No.356『今後の日本人に必要な能力とは-2』
予算の優先順位をグローバル化せよ

あなたは、そして我々日本国民たちは、今のままの教育で良いと思っているでしょうか。

仮にほとんどの国民がそうでない場合、それは自己を肯定できていないという事になります。日本人である事に誇りを持っている割合が先進国中で最下位という国際調査データもあります。これが(拙著「魔法の就活?親子関係からの自己肯定感が内定を決める?」の、)社会全体の自己肯定感が低いという私の主張の根拠です。

自己を肯定できない。自分を認められない。自信がない。一人の人間にとって、これはつらく悲しい「不幸」な事でしょう。それが重なれば精神疾患に向かっていく可能性さえあります。文部科学省の文書に不登校の原因として“無気力”等と記載されていますが、学習への意欲や気力をココロが不幸な人に求めても無理というものでしょう。ココロが不幸な人にとっては、毎日を生き延びるのが精一杯で勉強する意欲どころではありません。

それは、国家にとっても同じはず。借金は増え続け、将来は不安、誇りを持てない、生き延びるのに精一杯な風潮も。日本は今「不幸な国」の入口に立っているのです。今の日本の、自己肯定感は急激に低下しています。自らの【哲学】を持てない我が国の将来に、そして我が子の将来に、不安を抱いている国民は少なくないでしょう。

しかし、明日の日本国債の暴落やIMF債務管理国家に堕ちた時の準備をしている人はまだいないでしょう。まだ国債を新規発行できている…まだ、ほとんどの欲しがる子供達がケータイ、スマホ、ゲームを買える…もうすぐ、そうではなくなります。買えない層が激増する。そこそこ余裕がある今こそ、予算の優先順位を変える等の手を打つべきです。もともとリストラとは解雇や血を流すという意味ではなく「再構築」、賢い経営なら順調な時にこそ取り組むべきもの。

今のカリキュラムや予算の優先順位は「グローバル仕様ではない」のです。少なくとも英会話・国際コミュニケーション能力育成に関しては、公教育で国民教育として取り組まない限り、収入減少・税収減少、ワーキングプア・生活保護・年金破綻…超格差社会の温床となり、自分の首をしめる事になります。

習慣づくり・興味関心づくりは、脳の臨界期である9歳から10歳、いわゆる「?つ」の付く年齢までにすべきだと考えますが、特に英会話コミュニケーション能力に関しては、小学校高学年スタートの現状では遅すぎると私は考えます。今のままでは、経済の国際化でアジア諸国に抜かれていくのはもう目に見えています。

小学1年生から正課として本格的な英会話コミュニケーション教育を始める、あるいはそれを実施する自治体に、国は財政支援をしていくべきでしょう。英会話ができる小学校教諭が必要なのではありません。まずは、幼稚園や小学校低学年対象に外国人による指導を日常的に導入している学校をモデル校に指定し財政支援、ノウハウを吸収しながら拡げていけば良いのです。実際、長野県下諏訪や茨城県鹿嶋市では、既に全校で実施されています。国政にとっての改革とは、予算の優先順位を変えるという事です。優先順位をグローバル化への対応にシフトしていかないと、仕事の空洞化同様、国民の能力が空洞化してしまうでしょう。

これは、これからの社会に必要な人間づくりという「国民教育」であるはずですから。

これから、国際社会で日本はどうありたいのか、日本人はどう生きるべきかという【哲学】を、我々は問われているのです。そしてそれはおそらく「安心な鎖国」ではなく、「グローバル化に向けた新しいチャレンジ」という方向性でしょう。私は日本から逃げるつもりはありません。

(続く)

  • UNIQLOや楽天の社内公用語が英語だと知っている
  • メガバンク他の採用条件に、TOEFL・TOEICスコアが必要だと知っている
  • 社長や上司が外国人になったらイヤだなぁ
  • なんで総理大臣が教育改革を言い出さないのか不思議
  • 古い利権構造に詳しい
  • 学校や文部科学省に任せられる
  • いつの間にかサムスンに抜かれてたなぁ
  • 我が子の年金額と支給開始年齢を知っている
  • 借金してでも教育に投資したい
  • 家計の優先順位を変更した事がある

No.357『今後の日本人に必要な能力とは-3』
学校や教師のせいにする国民を育てた教育行政

体罰、イジメ、自殺、不登校…これらの根本的な原因は何だと、あなたは感じますか?

もちろん、その要因は既に一つではないでしょう。時代が違えば「?たら/?れば」はもう通用しませんし、歴史的な総括も移り変わるものです。これだけ複雑化した文明社会、ただ一点だけ改善すれば元に戻せるものでもないでしょう。

私はあえて、たくさんの物理的要因から離れて、感情的・感覚的視点から論じてみようと思います。皆が「自己を肯定できるようにさえ、すれば良い」のだと。国民の、それぞれの立場の【自己肯定感】。

以前、国で教師を育てるのは師範学校でした。例えば、東京高等師範学校(→東京教育大学→筑波大学)が、一高つまり東京大学と肩を並べていたように、教師はトップエリート・社会のリーダーにしかなれない職業でした。生涯収入の相対的価値も尊敬される度合いも、もちろん【自己肯定感】もトップレベルだったでしょう。ちなみに現在の国公立大学教員養成課程の難易度は、医学部・法学部・経済学部などより遥か下の…中の上くらいでしょうか。生涯収入も地方特別公務員扱いで、飛び抜けて高いとは言えないでしょう。何よりモンスターペアレンツに脅え、アタリだハズレだと評され、デモシカ先生と皮肉られ、まるでサービス業かのような扱われ方。日本の次世代のほとんどが関わる、次の日本を創る、大切な役割であるはずなのに。「君は教師になりなさい」と教師達が言わない、言えない。【教師達の自己肯定感が、低い】。それで子供達の自己肯定感を高められるでしょうか。

私は個人的に、あえて極論すれば教師の人数を半減してでも、一人の給料は2倍にして、より優秀な人材が集まるよう、教師の待遇を改善すべきだと考えています。姿で見せ、目で殺せるようなカリスマ性のある人間なら、多様化したとは言え以前のように50人クラスでもコントロールできるでしょう。逆に自己肯定感の低い大人がいくら2人でTT(ティーム・ティーチング)しても、25人を自己肯定感の高い人間に育てられないと私は確信しています。ちなみに現在、精神疾患で休職・退職する教員数は急増しています。

本来、学校は学校であって、予備校や学習塾とは違い顧客満足の負担を負うべきサービス業ではなかったはずです。モンスターペアレンツ対応に追われたり、何か問題があればマスコミに叩かれたり…これでは、人づくり国づくりに貢献しようとする優秀な人材はますます減少していくでしょう。マスコミも権力を恐れるからか本質が見えないのか現場の弱い者イジメばかり…突っつく場所を間違えています。国家として【教師の自己肯定感を高める】ための施策を打たなければ、ますます現場は萎縮し、国民にとってプラスな事は更に少なくなっていくでしょう。

ところで、今の教師は「教えること(教務)」「児童生徒に向き合うこと」に専念できているのでしょうか。答えはNOです。公務員として膨大な「事務作業」に忙殺され、本来不可の事務作業自宅持ち帰り…部活動の顧問は土日も休み無し…家族旅行は一体いつできるのでしょうか?社会性を教えるべき教師が社会に出られない?

民間企業なら、事務は事務のプロが担当するでしょう。学校組織にも事務員制度を導入、教師が教務に専念し【自己肯定感】を保てるよう改編すべきでしょう。こんな大切な役割を務めて貰っていて給与引き下げ?本気で心配しているのですが、平均寿命は短くないのでしょうか。何か問題が起きたら何から何まで教師のせい・学校のせい?

その時、親は家庭は、何をしていたのでしょうか?

(続く)

  • 学校の先生は特別な役割を務めてくれている
  • 学校の先生は公務員に成り下がった
  • 教師の自己肯定感≦自分の自己肯定感
  • まず自分の反省を先にする
  • 教諭の生涯賃金や平均年収を知っている
  • 我が子には尊敬している教師がいる
  • 教師の事務作業量を知っている
  • 家族旅行をしている
  • 週休0日なんて当たり前だ
  • 人を尊敬できない

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